中学受験算数「場合の数」の基本とコツ|和の法則・積の法則・並べ方を一気に整理
このページでは、中学受験算数の「場合の数」を、入試で“取り切る”ための考え方(型)から整理します。
ポイントは、足す(和の法則)・かける(積の法則)の判断と、数え漏れ/二重カウントを防ぐ「正しい場合分け」です。
まずは「足す?かける?」を迷わないための基本と、0〜4のカードで三桁の偶数など定番例題で確認します。
そのうえで、樹形図での整理、余事象(確からしさにもつながる発想)まで、復習・自学用にまとめました。
場合の数とは?単元の特徴と苦手になりやすい理由
「場合の数」は、ある条件を満たす場合が何通りあるかを数える単元です。中学受験の算数の中でも、頻出かつ範囲が広い分野です。
場合の数が嫌われやすい理由
授業の現場では、場合の数は「苦手」だと感じる生徒が圧倒的に多い単元です。得意な生徒よりも、苦手な生徒の方が10倍ほど多い印象すらあります。その理由として、次の点が挙げられます。
- 問題の種類がとにかく多い
- カードを並べる問題(例:1・2・3・4・5 と 0・1・2・3・4 では性質が違う)
- 同じ数字を含むカード(例:0・1・1・2・3)の場合、解き方が変わる
- 道順の問題、色の塗り分け、並べ方、選び方 など形式が多彩
- 短時間に多くのパターンを詰め込まれやすい
- 塾によっては、1〜2回の授業で多くの種類を一気に学ぶ
- 覚えることも「ひっかけポイント」も多く、テストで失点しやすい
- 「何が大事で、何が大事でないか」が分かりにくい
- 個々の解き方ばかり覚えようとしてしまい、根本原理がおろそかになりがち
だからこそ、まずは「場合の数の根っこ」にある考え方を整理することが大切です。
一番大事なこと:積の法則・和の法則と場合分け
場合の数の根本「積の法則」と「和の法則」
場合の数の根本となる考え方は、次の2つです。
- 積の法則 …… 「〜して、さらに〜する」ときの掛け算
- 和の法則 …… 「〜の場合」と「別の場合」があるときの足し算
多くの生徒はなんとなく使っていますが、
- どの場面で掛けるのか(積の法則)
- どの場面で足すのか(和の法則)
を明確に区別して説明できる生徒は意外と少ないのが実情です。また、「これは積」「これは和」と言葉で聞くだけでは、目の前の問題でどちらを使うべきか判断しにくいという難しさもあります。
具体例:0〜4のカードで三桁の偶数
次の問題で、「積の法則」と「和の法則」の違いを確認してみましょう。
0・1・2・3・4のカードから、三桁の偶数は何通りできますか。
- 一の位に注目して場合分け
偶数なので、一の位は 0・2・4 のいずれかです。- 一の位が0の場合
- 一の位が2の場合
- 一の位が4の場合
- 一の位が0の場合
残りは 1・2・3・4 の4枚。- 百の位:4通り(0以外)
- 十の位:残り3通り
したがって、
百の位の選び方 × 十の位の選び方 = 4 × 3 = 12通り - 一の位が2の場合
百の位には 0 は使えず、2も使えないので、選べるのは 1・3・4 の3通り。
十の位には残りの3通りが入ります。
よって 3 × 3 = 9通り。 - 一の位が4の場合
考え方は一の位が2の場合と同じで、やはり 3 × 3 = 9通り。
ここまでが積の法則です。「百の位の選び方 × 十の位の選び方」と、段階を掛け算でつないでいるのがポイントです。
では、最終的な答えはどうなるでしょうか。
- 一の位が0 …… 12通り
- 一の位が2 …… 9通り
- 一の位が4 …… 9通り
この 3つは、「同時に起こる」のではなく、別々のグループです。したがって、ここでは掛け算ではなく足し算になります。
12 + 9 + 9 = 30通り
これが和の法則です。
ところが、実際の現場では、ここで 12×9×9 と掛けてしまう生徒が少なくありません。このミスは、
- 「段階を進めるときは掛け算」
- 「別グループをまとめるときは足し算」
という区別が曖昧なことから生まれます。
部分ごとの選び方や手順は積の法則(掛け算)
その結果できたグループ同士は和の法則(足し算)
このイメージを持ったうえで、実際に手を動かして練習することで、「ここは掛ける」「ここは足す」という判断力がついてきます。積と和の区別がつくようになると、場合の数は一気に得意分野に変わります。
算数全体を支える「場合分け」の力
もうひとつ重要なのが「場合分け」の力です。
- 今回の例では「一の位が 0 / 2 / 4」の3パターンに分けた
- この「正しく分ける」ことができるかどうかで、問題の難易度が大きく変わる
場合分けを誤ると、
- 考えなくてよいパターンまで数えてしまう
- 数え漏れや二重カウントが発生する
といったミスにつながります。
場合分けは、場合の数に限らず、
- 速さ …… 「向かい合って進む / 同じ方向に進む」
- 売買・損益 …… 「利益が出る場合 / 損失が出る場合」
など、算数全体で必要になる考え方です。
問題を見たときに、
- 「これはどういうパターンに分けられるか?」
とまず考えられるようになると、場合の数はぐっと解きやすくなります。

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中学受験算数で場合の数を取りきるための解き方
中学受験の算数では、場合の数の出題頻度は非常に高くなります。さまざまな解法を知ったうえで、問題のタイプに応じて解き方を選び分けることが重要です。
樹形図を用いる
多くの文章題は、計算式だけでなく「書き出す」ことができれば解ける問題です。その代表が樹形図です。
- 順列・組み合わせは、計算式でも樹形図でも求められる
- 問題文に書かれている順番に従って枝を広げていくのがコツ
- 「〇人の中から△人を選ぶ」といった問題では、A・B・Cなどの記号を使うと整理しやすい
樹形図を書くと、数字だけでは見えにくかった全体像が視覚的に整理されるため、数え漏れや二重カウントを防ぎやすくなります。
本番では時間制限があるため、
- 計算で処理したほうが明らかに速い問題は計算を優先
- ただし、普段の学習では樹形図を書くクセをつけて思考力を鍛えることが大切
樹形図を書きながら「なぜそう数えるのか」を考えることが、後々の応用力に直結します。
場合分けの重要性
場合分けの問題を解くときは、
- どの観点で分けるのがよいか
- どこで分けると整理しやすいか
を見極める必要があります。
間違った視点で場合分けをすると、
- 考える必要のないパターンまで数えてしまう
- 時間ばかりかかって、何を求めていたのか分からなくなる
したがって、
- 問題で何を聞かれているかを正確に理解する
- 正しい視点に立って場合分けをする
- 解き終わったら、問いに対して正しく答えているか必ず見直す
といった基本を徹底することが大切です。
余事象を考える
場合の数では、「求めたいものを直接数える」より「反対のものを数えて引く」ほうが速いことがよくあります。これが余事象の考え方です。
たとえば、「0を含むカード数枚から、偶数になる場合を求める」問題では、
- 偶数を直接数える
- 全体の通り数から奇数の通り数を引く
という2通りのアプローチが考えられます。後者のほうが計算が圧倒的に簡単になることも多いです。
余事象を使ってすっきり解ける問題は積極的に活用しましょう。中学受験は時間との勝負です。「答えにたどり着くための最短ルート」を常に探しながら問題に向き合うことが、合格レベルの得点力につながります。

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場合の数の問題演習と解き方
カードを並べる問題
●例題1
(1) 【0】、【1】、【2】、【3】、【4】の5枚のカードのうち、3枚を並べて3けたの整数をつくる。
(2) 【7】、【8】、【9】、【0】の4枚のカードのうち、3枚を並べて3けたの奇数をつくる。
(3) 【A】、【B】、【C】、【D】の4枚のカードを【A】と【B】がいつもとなり合うように1列に並べる。
●解き方
(1) 0〜4のカードで3けたの整数
3枚のカードを並べ、百の位・十の位・一の位を決めます。このとき、0は百の位には使えないので注意が必要です。
- 百の位:1・2・3・4 の4通り
- 十の位:百の位で使ったもの以外の4通り
- 一の位:残りの3通り
したがって、
4 × 4 × 3 = 48通り
(2) 7・8・9・0 のカードで3けたの奇数
奇数なので、一の位を奇数(7 または 9)に固定して場合分けします。
- 一の位が7の場合
- 百の位:0は使えないので、8・9 の2通り
- 十の位:残りの2通り(0と使っていない1枚)
- → 2 × 2 = 4通り
- 一の位が9の場合
- 百の位:0は使えないので、7・8 の2通り
- 十の位:残りの2通り
- → 2 × 2 = 4通り
よって、
4 + 4 = 8通り
(3) AとBがいつもとなり合う並べ方
AとBが常になり合っているので、AB をひとつの「かたまり」として考えるのがポイントです。
- ABのかたまり・C・D の3つを並べる:3!=3×2×1=6通り
- ABの中身は AB と BA の2通り
したがって、
3×2×1×2 = 12通り
サイコロの確率の問題
●例題2
●解き方
まず、「目の和が6以下」になる出方の通り数を数えます。
- 大きいサイコロが1のとき……小さいサイコロは 1・2・3・4・5(5通り)
- 大きいサイコロが2のとき……小さいサイコロは 1・2・3・4(4通り)
- 大きいサイコロが3のとき……小さいサイコロは 1・2・3(3通り)
- 大きいサイコロが4のとき……小さいサイコロは 1・2(2通り)
- 大きいサイコロが5のとき……小さいサイコロは 1(1通り)
- 大きいサイコロが6のとき……和が6以下にならないので数えない
したがって、
5+4+3+2+1=15通り
次に、全体の場合の数を求めます。
- 大きいサイコロの出方:6通り
- 小さいサイコロの出方:6通り
よって、全体は 6×6=36通り。
求めたい確率は、
15 ÷ 36 = 5/12
となります。
道順の問題
●例題3

●解き方

「遠回りせずに途中でCを通る」ので、図の青い線だけを通ることになります。

まず、AからCまで遠回りしないで行く道順を数えると、10通りあることが分かります。

同様に、CからBまで遠回りせずに行く道順も図をもとに数え上げていきます(図の構造により通り数が決まります)。ここでは、CからBまでの道順が6通りと分かるケースを例にとると、
- A→C:10通り
- C→B:6通り
- 両方の道順を組み合わせるので、10×6=60通り
したがって、答えは60通りとなります。
このタイプの問題では、「途中の点まで」と「そこから先」を分けて考え、それぞれを場合の数として扱うのがポイントです。
まとめ:場合の数を得意分野に変えるために
場合の数は、計算だけで答えを出せる問題も多い一方で、「なぜその式になるのか」を理解していないと、少しひねられた問題に対応できなくなる危険な単元でもあります。
- 積の法則・和の法則の違いを意識する
- 正しい視点で場合分けを行う
- 樹形図・表・図を用いて状況を可視化する
- 余事象など、解答までの最短ルートを探すクセをつける
- 「式だけでなく、理由も説明できる」状態を目指して演習する
中学受験算数で場合の数の問題を取りきるためには、日々の演習の中で、思考力とパターン認識の両方を鍛えていくことが不可欠です。
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算数の「場合の数」は、正しい考え方を身につければ必ず得点源にできます。一緒に、場合の数を得意分野に変えていきましょう。



