「中学受験Q&A(2)~親のサポートと受験環境の整え方~
中学受験Q&A:受験生活でよくあるお悩みと考え方
このページでは、中学受験を目指すご家庭からよく寄せられる質問にお答えします。
親のサポートの仕方、集団塾と個別指導塾の違い、テレビやゲームとの付き合い方、習い事との両立、過去問の進め方、志望校の選び方など、受験生活の中で必ず一度は考えるテーマばかりです。
動画とあわせて、文章でポイントを整理していますので、ご家庭の方針を考える際の参考にしていただければ幸いです。
親のサポートはどれぐらい必要か?
中学受験において、親のサポートは「べったり見続ける」「まったく見ない」という極端な形ではなく、ちょうど良い距離感の“折衷案”が理想です。
一定のサポートや管理は必要ですが、過干渉になりすぎると、お子さんの自立の妨げにもなってしまいます。
おすすめは「時間の管理だけをする」サポート
親御さんにおすすめしているスタンスは、「時間の管理だけをする」というものです。具体的には、
- 何時から何時まで勉強するかを決める
- 何曜日はどの教科に取り組むかを決める
といった形で、学習の「枠」(開始と終了)だけを親が管理し、内容や出来具合には過度に干渉しないというイメージです。
もちろん、お子さんの性格・状況によって調整は必要です。しかし、
- 過干渉になって「全部親が管理しないと進まない」状態にしない
- 放任しすぎて「勉強のリズムがまったく作れない」状態にもならない
というバランスを意識しながら、時間管理を中心にサポートすることが、親御さんにとっての大切な役割と言えるでしょう。
集団指導塾と個別指導塾は何が違うか
「集団指導」と「個別指導」は、単に形態が違うだけでなく、それぞれに明確なメリット・デメリットがあります。特に大きな違いは、「常に1人か、1人ではないか」という点です。
集団指導塾の特徴
- 周りに同じ目標を持つ生徒がいる
- 他の生徒がどれぐらい解けるか・どれぐらい速いかをリアルに感じられる
- テストのタイム感・処理スピードについて、自分とのギャップを実感しやすい
例えば同じ計算テストで、ギリギリ2分で終わる子と、30秒で終える子が同じ教室にいると、
「自分はまだスピードを上げた方がいいんだ」という感覚をリアルに持ちやすくなります。これは集団指導の大きなメリットです。
個別指導塾の特徴
- 講師と1対1、または少人数で、自分のペースに合わせて指導を受けられる
- 弱点単元に絞って、集中的に対策ができる
- 周囲との比較が少ない分、焦りにくい一方で「競争のリアリティ」は感じにくい
どちらが絶対に良い・悪いということではなく、
- 「競争の中で伸びるタイプ」か
- 「自分のペースでじっくり積み上げるタイプ」か
といったお子さんの気質と、ご家庭が重視したいポイント(環境・フォローの手厚さなど)を踏まえて選ぶことが大切です。
テレビやゲームと勉強のバランスは?
昔からよく話題になるテーマですが、基本的な考え方は今も変わりません。
「勉強漬け」も「遊びっぱなし」も避け、時間のルールを決めてバランスを取ることが重要です。
時間を決めてバランスを取る
まず押さえたいのは、「テレビやゲームの時間をきちんと決める」という、ごく当たり前のルールを徹底することです。
- 勉強をする時間帯を先に決める
- そのうえで、「余暇」としてテレビやゲームの時間を設定する
「点数」より「頑張った時間」を評価する
ご家庭によっては、
- 「〇点取れたらゲーム1時間増やす」
といった形で、成績を報酬に結び付けるケースもありますが、これはあまりおすすめできません。
点数が取れなかった場合、
- 「ゲームお預け → さらに勉強」という流れが続く
- 結果として、モチベーションに良い影響を与えないことが多い
という問題が生じやすいからです。
それよりも、「頑張った時間」を評価する使い方が望ましいと考えています。
- 「今日は◯時間きちんと机に向かったから、ゲームを○分していいよ」
- 「毎日この時間帯は勉強をやりきったら、その後はTVを見ていいよ」
というように、勉強時間の達成を評価する形でバランスを取ると、長期的にも安定しやすくなります。
習い事と受験の両立は可能か?
結論から言うと、両立しているご家庭は実際にかなり多くあります。
特に、時間のかかる習い事を続けながら中学受験に挑むご家庭も少なくありません。
両立できている子の共通点
習い事と受験勉強を両立できているお子さんには、共通する特徴があります。
- 時間の使い方が元々上手
- スキマ時間をうまく埋めて、「ここでこれをやる」とスケジュールを組めている
- その生活を何年も前から続けてきた結果、時間管理が得意になっている
時間があればあるほど勉強する…とは限らず、
「時間が限られているからこそ、やるべきことを絞って集中する」という発想ができる子は、両立もしやすい傾向にあります。
判断のポイント
両立が可能かどうかを考える際は、
- 今の生活スタイルで、勉強時間をどれだけ「効率的に」確保できるか
- 習い事の優先度と、受験の優先度をどう位置付けるか
といった点をご家庭で整理してみてください。
「時間をどれだけ有効に使えるか」が両立のカギになります。
受験生がいる家庭で気を付けること
受験生のいるご家庭で特に大切なのは、「朝型の生活リズム」を身に付けることです。
中学入試の多くは、基本的に朝から試験がスタートします。
夜型生活が続くリスク
たとえば、
- 塾から帰宅 → 夕食 → その後に宿題・勉強を始める
- 気づけば就寝は24時過ぎ、起床は6時半〜7時台
という生活が続くと、「慢性的な睡眠不足のまま学校・塾・勉強を続ける」ことになります。
受験期にこれが続くのは、集中力・体調の面でも大きなリスクです。
小6で意識したい「朝型」のステップ
一つの目安として、小学6年生の受験生であれば、
- 夏休み:朝6時に起きて勉強をスタート
- 秋口:5時半起床を目指す
- 冬休み〜入試本番:朝5時起床で、漢字や計算などの基礎から勉強を始める
といった形で、徐々に朝型にシフトしていくイメージを持っておくと良いでしょう。
受験の特性上、「朝に頭をフル回転できる生活」が、ご家庭でどこまで整えられるかが重要なポイントになります。
説明会で見るべきところは?
学校説明会は数も多く、内容も多岐にわたります。
その中で大切なのは、「自分たちは何を重視して学校を選ぶのか」を明確にしておくことです。
事前に「見るポイント」を決めておく
学校選びで重視するポイントは、ご家庭によってさまざまです。
- 通学のしやすさ(駅からの距離・通学時間)
- 周辺の環境(安全面・雰囲気)
- 学校の教育内容・カリキュラム
- 校風や生徒の雰囲気、クラブ活動
何となく説明会に参加して、「なんとなく良さそうだから受けてみよう」という形で決めてしまうと、
入学後に「思っていたのと違う」というミスマッチが起こる可能性もあります。
だからこそ、
- 「この学校ではここを見てこよう」
- 「うちの子に合いそうかどうか、特にこの点で確かめたい」
といったチェックポイントを事前に決めてから参加することが、とても大切になります。
過去問の進め方について
志望校が固まり始める6年生の夏〜秋にかけて、多くのご家庭が悩むのが「過去問をどの順番で、どれくらい解くか」という問題です。
志望順位と「年数」の目安
基本的には、よく言われる通り、
- 志望順位の低い学校から順に過去問を解いていく
という進め方が一般的です。ただし、受験校が多すぎる場合、
- 第5志望から順番に進めていたら、第1志望に手が回らなかった
という事態も起こり得ます。
そこで一つの目安として、
- 第5志望校:2年分程度
- 第3志望校:3年分程度
- 第2志望校:5年分程度
- 第1志望校:10年分程度
というように、志望順位に応じて「解く年数」に強弱をつける方法がおすすめです。
スケジュールは必ず逆算で組む
よくあるのが、
- 1月のギリギリまで過去問が詰め込まれているスケジュール
ですが、これは避けたいパターンです。
目安としては、12月中旬〜下旬(冬期講習前)までに「過去問の1周目」を終えるのが理想です。
このゴールを基準に、
- 「どの学校をいつから始めれば、どの年数まで解けるか」を逆算して決める
という形でスケジュールを組んでいきましょう。
塾から「9月開始」「10月開始」などの目安が提示されることもありますが、実際に受験する学校の数と年数から逆算して、自分に合う開始時期を考えることが重要です。
過去問は「シミュレーション」として使う
過去問を解くとき、
- 1科目ごとに時間を測って解く → すぐに答え合わせ → 直し
という形で進めるケースが多いですが、過去問は本来、「本番のシミュレーション」として使うのが理想です。
- できる限り本番と同じ「時間帯」で解いてみる
- 例えば本番が朝8時開始なら、土曜日の朝8時から過去問をスタートする
- 1科目目国語、2科目目算数…と、本番と同じ順番で解いてみる
そのうえで、
- 4科目トータルで採点・振り返りをする
- どの教科・どの大問で失点したかを分析し、しっかり直しをする
という流れが作れると、「朝にどれだけ頭が働くか」「何時間集中力がもつか」も含めて、本番に近い状態を体験できます。
志望校について塾の先生と意見が合わない場合
志望校選びで、塾の先生とご家庭・お子さんの意見が合わない…というケースは、決して珍しくありません。
塾の先生の視点と、受験生側の視点
塾の先生は、
- 偏差値や合格可能性
- 過去問の得点状況
- 他の受験生との比較やこれまでの経験
などから、「このラインが妥当」「ここが落としどころとして現実的」という判断をしています。
一方で、ご家庭・お子さんには、
- どうしても行きたい学校
- 校風や立地、部活動などへの憧れ
といった思いがありますから、両者の意見がズレるのは自然なこととも言えます。
「相性」を測るうえでの過去問の使い方
志望校との相性を考える際、鍵になるのが過去問です。
- 過去問を解いてみて、何となく「点数が取りやすい」「解きやすい」と感じる → 相性が良い可能性が高い
- 偏差値は足りているのに、過去問を何度解いても全く点数が伸びない → 以下の2パターンの可能性
- 傾向をきちんと掴まないと対応できない学校(慣れれば伸びる)
- 本当に相性が悪い(何度解いても感覚がつかめない)
1回解いただけで「相性が悪い」と決めつけるのではなく、
2〜3回取り組んでも全くスコアが伸びない場合は、相性を再検討する材料になると考えてよいでしょう。
最終的な決定と「受験校のグラデーション」
意見が合わないときでも、
「自分の人生だから、最終的には自分たちで決める」という姿勢も大切です。
ただし、すべてを「やりたいように」決めてしまうのはリスクも大きいため、
- 安心して受験できる学校(安全校)
- 合格可能性としては妥当な学校(実力相応校)
- チャレンジ校(第一志望・難関校など)
というように、少なくとも3段階のグラデーションで受験校を組むことをおすすめします。
そのうえで、塾の先生の意見も参考にしながら、志望校のバランスを整えていきましょう。
まとめ:中学受験Q&Aを受験生活に活かすために
- 親のサポートは、「時間の管理」を中心に、過干渉と放任の間のバランスを取ることが大切です。
- 集団指導塾と個別指導塾にはそれぞれの良さがあり、お子さんのタイプやご家庭の方針に合わせた選択が必要です。
- テレビやゲームは「頑張った時間」を評価してルール化し、モチベーションを損なわない形でバランスを取りましょう。
- 習い事との両立は、時間管理ができるかどうかがカギ。生活スタイルを見直しながら判断することが重要です。
- 受験生のいる家庭では、朝型の生活リズムを整えることが何より大切です。
- 学校説明会では、事前に「自分たちが重視するポイント」を決めてから参加し、ミスマッチを防ぎましょう。
- 過去問は「シミュレーション」として活用し、志望順位・年数・スケジュールを逆算して計画的に進めましょう。
- 志望校について塾と意見が合わない場合は、過去問で相性を確認しつつ、受験校に安全校〜チャレンジ校までのグラデーションを持たせることが大切です。
中学受験は、ご家庭ごとの方針やお子さんの個性によって、最適な形が変わります。
今回のQ&Aを参考に、ぜひご家庭にとって一番良いスタイルを話し合いながら見つけていってください。



